先に結論です。金融庁の無登録業者リストで本当に読むべきなのは、社名の列ではなく右端の「備考」です。令和8年8月27日更新の海外所在業者のPDFは201ページ。その令和8年8月掲載分に載ったVantage Trading Ltd.の備考には、サービス名称が令和5年3月29日付で警告した「Vantage Global Limited」、令和6年6月20日付で警告した「Vantage Prime Trading Limited」と類似している、と書かれています。同じサービス名が、法人と所在地を替えて3回載ったということです。社名だけを見て「リストに無い」と判断すると、この連鎖は素通りします。
金融庁が平成22年1月以降、無登録のまま金融商品取引業を営んだとして警告書を発出した業者の名称等を公表しているものです。海外所在業者の分と国内の分に分かれていて、海外分のPDFが冒頭の201ページ。列は5つだけで、商号・所在地・金融商品取引業の内容等・備考・掲載時期です。最も古い掲載は平成23年1月で、そこにはCCFX Ltd.という業者が載っています。
登録の有無そのものを引く手順はそのFX会社、金融庁に登録ある?確認手順に書きました。今回はその逆側、登録が無いと分かっている業者の記録をどう読むかという話です。私は最初、このPDFを「ブラックリスト」だと思って開きました。実際に読んでみると、性格がかなり違うんですよね。
違います。金融庁は、掲載対象を「警告書を出した時点で無登録営業が確認できた者」に限ると断ったうえで、PDFの各ページ下部にこう続けます。
掲載されていない者であっても、無登録営業に該当する行為を行っていることがあり得ますのでご注意ください。
金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」(海外所在業者分・令和8年8月27日更新)
もうひとつ、同じ場所にこうも書かれています。掲載されている業者について、必ずしも現在の無登録営業の状況を示すものではなく、名称や所在地等も現時点のものでない場合があると。つまりこのPDFは現況の一覧ではなく、過去にここで止められた、という記録です。「載っていないから大丈夫」も「載っているから今も営業中」も、どちらもこのリストからは言えません。
令和8年8月に載ったVantage Trading Ltd.の行を、列ごとに要約するとこうなります。
| 列 | 記載内容 |
|---|---|
| 商号 | Vantage Trading Ltd. |
| 所在地 | Ebene Cybercity, Mauritius(モーリシャス) |
| 業務の内容等 | インターネットを通じた店頭デリバティブ取引の勧誘 |
| 備考 | サービスの名称は「Vantage Trading、ヴァンテージ」。令和5年3月29日付警告の「Vantage Global Limited」、令和6年6月20日付警告の「Vantage Prime Trading Limited」とサービス名称が類似 |
| 掲載時期 | 令和8年8月 |
間に挟まっているVantage Prime Trading Limitedはセントルシア所在で、令和6年6月の掲載。その備考にも、令和5年3月29日付で警告を受けたVantage Global Limitedとサービス名称が類似している、と書かれています。法人名と所在国が入れ替わりながら、利用者に見せる名前だけが残っている構図です。会社概要のページに書いてある法人名を照合しても、この連鎖は捕まえられません。
あります。PDF全体で「類似」という語は11回出てきました。FXに関係するものを抜き出すと、こうなります。
| 掲載された業者(所在地) | 使っていたサービス名 | 備考で指摘された先行業者 |
|---|---|---|
| XM WebTrader(ベリーズ/令和6年9月) | XM WebTrader | 令和2年8月21日付警告の「Tradexfin Limited」の「XMTRADING、XMTrading」と類似 |
| GT Global Ltd(セーシェル) | FXGT.com | 令和2年6月29日付警告の「360 Degrees Markets Ltd.」の「FXGT」と類似 |
| bitcastle LLC(セントビンセント・グレナディーン) | bitcastleFX | 関係性は不明としつつ、令和7年3月26日付警告の「STARTRADER LLC」等と所在地が同様もしくは類似 |
| MGK International(令和5年2月) | MGK International | 平成30年3月14日付警告の「MGK Global Limited」と類似した名称で、所在地の一部は同一 |
bitcastle LLCの行は書き方が少し違って、「当該業者との関係性は不明であるが」と断ったうえで、所在地の一致という事実だけを並べています。断定していない。ここは大事なところで、金融庁は推測を書いているのではなく、照合できる事実を置いているだけです。読む側がどう使うかは読む側に委ねられています。
「店頭デリバティブ」で数えると:このPDF内で「店頭デリバティブ」という語は39回出てきます。海外所在の無登録業者として警告を受けた相手のかなりの部分が、FXやそれに類する取引の勧誘だということです。他人事の資料ではないな、と思った数字でした。
私がやっている手順です。登録の有無を確認したうえで、まだ引っかかるときの二段目として使っています。
AIには検索の設計を頼む:私はChatGPTに『この201ページのPDFから、同じサービス名で複数回警告された業者を探す手順を作って』と聞きました。返ってきたのは、法人名ではなくサービス名とドメイン名で当たる、備考欄の警告日を起点に横断する、という組み立てで、これは実際に役に立ちました。判定そのものは頼まない。生成AIに「この業者は安全?」と聞いても、返ってくるのは一般論です。
そうとも限りません。PDFの注記には、警告書の発出は行っていないものの、証券取引等監視委員会が金融商品取引法第192条第1項に基づいて裁判所への禁止及び停止命令の申立てを行った業者も、広く周知する観点から掲載されているとあります。掲載の経路が一つではない、ということです。
また、掲載されている業者には、財務省の総合出先機関である財務局が金融庁の委任を受けて警告したものも含まれます。警告の出し手が複数いて、記録がこの1本のPDFに集約されている。だから載り方の重さは行ごとに違うという前提で読んだほうがいいと思っています。
照合する対象を3つに分ける、ということだと思っています。法人名・サービス名・所在地。このうち法人名はいちばん替えやすく、実際にVantageの3行は法人名も所在国も違いました。残ったのはサービス名だけです。
そして、このリストで判定できるのは「過去に警告を受けたか」までで、「今は安全か」ではありません。無料で、数分で、自分で確かめられる範囲を確かめておく。増やす話を始める前に、相手の名前を3列に分けてみる——それくらいの手間で済む話なんですよね。