先に答えを書きます。日本銀行が出している「外国為替市況」は、毎営業日の17時50分頃に公表されます。作っているのは金融市場局で、作成周期は日次。そこに載るドル円の中心相場は、その日いちばん取引が多かった値段です。チャートで見ている数字とは、作り方も時点も違います。
私、この存在をずっと知りませんでした。ドル円の「今いくら」はアプリを開けば出るので、それ以上を探したことがなかったんですよね。ChatGPTに『ドル円の公的な相場って誰がどう決めてるの』と聞いたら日本銀行の公表資料を教えられて、解説ページを読んで、はじめて手順が分かりました。
日本銀行の統計解説ページに、作成部署から公表方法まで表で並んでいます。作成部署は金融市場局、作成周期は日次、公表時期は毎営業日の17時50分頃、公表方法はインターネット・ホームページ、刊行物等は無し。解説そのものの日付は2023年1月です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作成部署 | 金融市場局 |
| 作成周期 | 日次 |
| 公表時期 | 毎営業日の17:50頃 |
| 公表方法 | インターネット・ホームページ |
中身は4つに分かれます。スポット・レート、出来高、名目実効為替レート、それに過去計数だけが残る参考項目。このうち私たちがふだん「ドル円」と呼んでいるものに一番近いのがスポット・レートです。
スポット・レートの定義は、売買の取引が成約してから2営業日目に実際に資金の受渡が行われる取引に適用されるレート。掲載されている数字は、インターバンク市場におけるレートに基づいたオファー(売り値)とビッド(買い値)です。
なお、これはインターバンクでの取引に適用されるレートですので、個人が銀行等の窓口で外貨を売買するレートとは異なります。
日本銀行「外国為替市況」の解説
公式だから自分にも同じ値段が適用される、ではないわけです。ここは念を押されている部分でした。
中心相場の定義は、取引金額で測ったその日の代表的なスポット相場。決め方は、ブローカーに当該日に最も取引の多かった出来値を聴取して、その結果を公表する、というものです。
平均でも終値でもありません。いちばん商いが厚かった値段を1つ選んで出している。だから、朝と夕方で大きく動いた日でも、中心相場は1本の数字に落ちます。
併記されるレンジは、ブローカーから聴取したその日の出来値のうち最高値と最安値です。中心相場が「代表」でレンジが「振れ幅」。この2つをセットで見ると、同じ値幅でも、薄く動いた日と厚く動いた日の違いが出ます。
時点のずれに注意:出来高の欄に載るのは、ブローカーから聴取した前営業日のブローカー経由取引分です。つまり出来高だけ1日ずれます。同じページの中で時点が揃っていない、というのはけっこう大事なポイントです。
取引アプリに出ているのは、業者が提示している今この瞬間の売値と買値です。日銀の中心相場は、その日の取引が終わったあとで確定する1本の値。役割がそもそも違います。
月に1度だけ公示される基準外国為替相場は、また別の物差しです。日次の中心相場とは頻度も目的も違うので、混ぜないほうが安全です。
指標としては、こう分けて考えると迷いません。日中の判断に使うのは業者のレート。あとから「あの日のドル円はいくらだった」と言うときに使うのが日銀の中心相場。前者は自分が約定できる値段で、後者は市場の記録です。
もうひとつ、月末の数字には計算で作られたものが混ざります。裁定相場と呼ばれるもので、市場で実際に取引が行われた相場ではなく、共通の通貨に対する為替相場から2つの通貨の相場を計算して求めたもの。日銀は、月末営業日の各通貨の対ドル・レートと、当該月末営業日のドル円中心相場で計算して表示しています。取引が少ない通貨ペアでは、便宜的な目安だと明記されています。
同じページに、名目実効為替レート(円インデックス)の作り方も載っています。こちらは特定の2通貨間のレートでは捉えられない、総合的な変動を見るための指標。作成方法は国際決済銀行(BIS)のBroad Indexに準拠します。
問題は、使うレートの時点です。対象通貨の為替レートは、原則としてBloombergが提供するNY17時時点のものを使う、と書かれています。日本時間に直すと翌日の朝7時時点、サマータイム期間中は朝6時時点。ドル円の中心相場が日本の夕方を切っているのに対して、円インデックスは翌朝を切っているわけです。
| 指標 | 切っている時点 | 出どころ |
|---|---|---|
| ドル円 中心相場 | その日の取引終了後(公表は17:50頃) | ブローカー聴取の出来値 |
| 出来高 | 前営業日 | ブローカー経由取引分 |
| 円インデックス | NY17時(東京時間翌日朝7時/夏時間は朝6時) | Bloomberg提供のレート |
貿易ウェイトは3年間の貿易額の平均値等をもとに3年ごとに更新され、更新されたときは過去の数字までさかのぼって改訂されます。基準時点は1999年1月4日で、この日を100として指数化。
日銀自身も注意を書いています。日次で公表する円インデックスの月中平均値は、月次の名目実効為替レートと完全には一致しない。理由は使用する為替レートの時点・ソースの違い等。同じ機関が出している似た名前の指標でも、数字は揃いません。
ここまでを踏まえると、為替の数字を人に見せるときに足すべき情報が決まってきます。私は3つだけ書くようにしました。
たとえば「9月22日のドル円は◯円」と書くとき。日銀の中心相場なのか、自分の口座の終値なのかで意味が変わります。前者はその日いちばん取引が多かった値で、後者は自分の業者が出していた値。どちらも正しいけれど、同じではありません。
この3つを書き添えるのに増える手間は、1行ぶんです。地味な作業だけど、あとから自分の記録を読み返したときに助かるのはこっちなんですよね。数字を増やすより、どの数字を見ているかをはっきりさせるほうが先だと思っています。