先に結論を書きます。ひまわり証券のループ・イフダン口座は最小取引単位1,000通貨。でも「1,000通貨ぶんのお金があれば動かせる」ではありません。自動売買は1回の注文ではなく、複数のポジションを抱えることを前提にした仕組みだからです。ありがたいことに、ひまわり証券は必要資金の計算式と具体例を公式サイトで公開しています。今日はその式を、電卓を叩きながら一緒に追ってみます。自分の予算で足りるのかを、人の要約ではなく自分の手で判断できるようにするのが目的です。
ループ・イフダンは、ひまわり証券が提供している自動売買(リピート系)のサービスです。ひまわり証券の説明によれば、リピート戦略とは売り買いワンセットの指値注文を繰り返すもので、ループ・イフダンではイフダンOCO(IFDO)注文が使われています。
イフダンOCOという名前は物々しいですが、やっていることは単純です。「この値段まで下がったら買う」という新規注文と、「買えたら、この値段まで上がったら売る/この値段まで下がったら損切りする」という決済注文を、あらかじめワンセットで置いておく。そしてそれを、一定の値幅ごとに何段も並べて置いておく。値段が下がるたびに買いが刺さり、戻すたびに利益確定される——それを人が見ていない間も繰り返す、という設計です。
自動売買の一般的な分類(リピート系・選択型・開発型)や、共通の落とし穴についてはFX自動売買(システムトレード)の基礎と注意点にまとめています。この記事はその一段先、「じゃあ実際いくら要るのか」を数字で詰めるところに絞ります。
ひまわり証券には口座が2種類あります。公式の商品概要ページには、こう書かれています。
つまり自動売買のほうが、裁量取引より1桁小さい単位から動かせるという構成です。少額で試したい人にとっては、ここは素直にありがたい。しかも申し込みは1回で両方の口座が付いてくるので、「自動売買を試すために別口座を作り直す」手間もありません。
ただ、私がここで立ち止まったのは「最小取引単位」と「必要な資金」はまったく別の話だという点でした。1,000通貨は、1本のポジションを持つときの最小サイズにすぎません。ループ・イフダンは値動きに応じてポジションを増やしていく仕組みなので、財布の中身は1本ぶんでは足りないんです。
必要資金は「①証拠金+②評価損」の2階建てで、ひまわり証券が計算式をそのまま公開しています。①はポジションを持つための担保、②は積み上がった含み損を抱え続けるための余力で、性格の違うお金です。
まずは全体像から。
| 内訳 | 計算式 | 何のためのお金か |
|---|---|---|
| ① 証拠金 | 取引証拠金額 × ロット数 × 最大ポジション数 | ポジションを持つために預けておく担保 |
| ② 評価損 | ループ幅 × 最大ポジション数 × ロット数 × 取引単位 ×(最大ポジション数−1)÷ 2 | まだ決済していない含み損に耐えるための余力 |
| 必要資金 | ① + ② | この設定を動かし切るために要る金額 |
②の式にある「取引単位」は、FXでは通貨数量のことで、1,000通貨なら1,000です。そして①の取引証拠金額は、公式の説明によれば現在レートの1,000倍(1,000通貨分)の4%で計算されます。ひまわり証券は総取引金額の4%を預託することで預託金の最大25倍まで取引できると案内していて、その4%がここに出てきます。
注目したいのは、①も②も「最大ポジション数」が掛かっていることです。裁量取引なら「1回の注文にいくら要るか」で話が終わりますが、自動売買は何本まで積むかを自分で設定する。だから設定した本数ぶん、必要資金がまるごと膨らみます。しかも②は最大ポジション数がほぼ2回掛かる形なので、本数を増やすと評価損の想定が加速度的に大きくなる構造です。
ここが裁量との分かれ目:ループ・イフダンの設定項目には「最大ポジション数」があり、損失方向の値動きでは一定間隔ごとにポジションを追加していきます。「下がったら買い増す」が仕様として組み込まれているということです。だから資金の話も「1本ぶん」ではなく「積み切ったときの合計」で考える必要があります。
ここからは、ひまわり証券が公開している計算例を実際に手で追います。1つ目は「ループ・イフダンB15(USD/JPY)」で15銭値下がりした場合。B15は、買い方向で15銭のループ幅、という意味の設定名です。
| 項目 | 公式が示している数字 | 内訳 |
|---|---|---|
| ① 証拠金 | 9,600円 | 4,800円 × 2ポジション |
| ② 評価損 | 150円 | 0.15円 × 1,000通貨 |
| 必要資金 | 9,750円 | 9,600円 + 150円 |
15銭下がると、ポジションは2本になります。最初に1本、15銭下がったところでもう1本。証拠金は1本あたり4,800円なので、2本で9,600円。
評価損のほうは少し面白い。2本あるのに、含み損が乗っているのは1本だけです。最初に持った1本は15銭ぶん(=0.15円×1,000通貨=150円)の含み損を抱えていますが、いま買ったばかりの2本目はまだ損も益も出ていない。だから評価損は150円で済みます。式に当てはめても0.15 × 2 × 1 × 1,000 ×(2−1)÷ 2 = 150で、ぴったり合います。
ここまでなら1万円弱。「思ったより現実的だな」というのが、最初に電卓を叩いたときの私の感想でした。問題は次です。
同じB15の設定で60銭下がるとポジションは5本になり、必要資金は25,500円。15銭のときの9,750円と比べると、値動きは4倍なのに必要資金は約2.6倍まで膨らみます。
設定は同じ「ループ・イフダンB15(USD/JPY)」で、今度は60銭値下がりした場合。15銭刻みなので、60銭ぶん下がるとポジションは5本になります。
| 項目 | 公式が示している数字 | 内訳 |
|---|---|---|
| ① 証拠金 | 24,000円 | 4,800円 × 5ポジション |
| ② 評価損 | 1,500円 | (0.15円+0.3円+0.45円+0.60円) × 1,000通貨 |
| 必要資金 | 25,500円 | 24,000円 + 1,500円 |
評価損の内訳を見てください。足し算の項が4つしかない。ポジションは5本なのに、です。理由は例①と同じで、いちばん最後に買った5本目にはまだ含み損が乗っていないから。残り4本が、それぞれ60銭・45銭・30銭・15銭ぶんの含み損を抱えている状態です。合計1.5円ぶん、1,000通貨なので1,500円。
式でも確認しておきます。0.15 × 5 × 1 × 1,000 ×(5−1)÷ 2 = 1,500。合いました。式を丸暗記しなくても、「刻み幅×本数を階段状に足す」と考えれば手で出せます。
そして本題。15銭で9,750円だったものが、60銭で25,500円。値動きは4倍ですが、必要資金は約2.6倍です。ここが自動売買の資金設計のいちばん大事なところだと思っています。
| 下落幅 | ポジション数 | 証拠金 | 評価損 | 必要資金 |
|---|---|---|---|---|
| 15銭 | 2ポジション | 9,600円 | 150円 | 9,750円 |
| 60銭 | 5ポジション | 24,000円 | 1,500円 | 25,500円 |
米ドル/円が60銭動くのは、正直なところ珍しいことではありません。指標発表のある日なら1日で通り過ぎることもある値幅です。それでも必要資金は2万5千円台になる。「1,000通貨から」の入口の数字だけを見て2万円を用意していたら、途中で息切れする——この距離感を知れたのが、私にとってこの計算例のいちばんの収穫でした。
証拠金4,800円という数字について:公式の例では1ポジションあたりの証拠金が4,800円で計算されています。取引証拠金額は「現在レートの1,000倍の4%」なので、4,800円という数字は1米ドル=120円のときの計算にあたります(120円 × 1,000通貨 × 4% = 4,800円)。証拠金はレートによって変わるので、実際に始めるときは、そのときのレートで自分で計算し直す必要があります。なお同じ必要資金ページには、同じ「B15で60銭下落・5ポジション」の例が証拠金4,600円で計算された版(23,000円+1,500円=24,500円)でも併載されています。この記事では4,800円の版を追っていますが、どちらにせよレート次第で動く数字だという結論は変わりません。
公式の例をそのまま使うのではなく、自分の設定と自分の予算に置き換えます。手順はこれだけです。
①+②が、その設定を積み切ったときに要る金額。手元の資金がこれを下回るなら、本数を減らすかループ幅を広げるか、通貨ペアを変えるかです。「足りないけど動かしてみる」だけはやめておきたい。積み切る前に力尽きる設定は、最初から想定どおりに動けない設定だからです。
この考え方は、裁量取引の資金管理とも地続きです。1回の取引で許容する損失額から逆算するやり方は無理しないFXの資金管理ルールに、少額から始めるときの単位の考え方は少額FX(1000通貨)で無理なく始めるメリットにまとめました。
ここは太字で書いておきたい。ひまわり証券の必要資金ページには、こう書かれています。
裁量取引なら、含み損を抱えていても余っている資金を引き出す判断はできます。ループ・イフダンでは、それができない。運用を止めるまで、そのお金はそこに置きっぱなしになります。
これは仕組みとして理にかなっています。ポジションを積み増していく前提の自動売買で、途中で担保を抜かれたら設計が崩れるからです。ただ、使う側からすると意味は1つで、生活防衛資金と1円も混ぜてはいけないということ。「いざとなったら戻せばいい」が通用しません。
私が自分で決めているのは、入金する前に「このお金は半年間ないものとして家計が回るか」を確認することです。車検、家電の買い替え、帰省の交通費。半年ぶんの出ていくお金を先に紙に書き出して、それでも余る額だけを自動売買側に置く。地味ですが、この順番を守るだけで「相場が動いたから慌てて止める」という一番やりたくない判断を避けられます。
ひまわり証券は、ループ・イフダンの説明として相場の7割から8割はレンジ相場であり、横ばいのレンジ相場が一番合っていると主張しています。リピート系の売り文句としては王道です。
ただ、同じページには冷静な但し書きも書かれています。リピート戦略は仕掛けて待つ戦略であり、待っているところに値動きがこないとトレードが発生しない、と。つまり静かすぎても動かない。そして——ここが本題ですが——想定したレンジを外れて一方向に動き続けたときは、逆に動きすぎる。ポジションが次々に積まれ、評価損が階段状に積み上がっていきます。
その先にあるのがロスカットです。ひまわり証券は必要資金ページで、こう説明しています。
ここで見落としてはいけないのが、45,200円は「1ポジションだけを持っている場合」の数字だということです。この例の最低必要証拠金は4,800円、つまり1本ぶん。50,000円から4,800円を引いた残りが45,200円という計算になっています。
ところがループ・イフダンは、値が動くほどポジションが積み上がる仕組みです。本数が増えれば最低必要証拠金も増えます。この記事の例②と同じ5ポジションを抱えた状態なら、最低必要証拠金は4,800円×5=24,000円。同じ5万円の口座でも、耐えられる評価損は50,000円 − 24,000円 = 26,000円まで縮みます。1ポジションのときの6割弱です。
入金額のうち「耐える余力」として使えるのは最低必要証拠金を引いた残り——読み方そのものは変わりません。変わるのは引く金額のほうで、ポジションが増えるほど余力は削られていく。積み上がっていく局面ほど、耐えられる幅は狭くなっていると考えたほうが実態に近いです。
そして忘れてはいけないのが、ここに達したら即座にその値段で止まるわけではないという点。ひまわり証券自身が次のように書いています。
だから私は「ほったらかしで増える」という文脈でこの手のサービスを紹介したくありません。放置できるのは注文の執行であって、資金の設計と監視ではない。ここを分けて考えられるかどうかが、自動売買と長く付き合えるかの分かれ目だと思っています。
ループ・イフダン口座には投資助言報酬が別途発生し、それはスプレッドに含まれると公式が明記しています。よく引用される「取引手数料はすべて無料」はレギュラー口座の話で、この商品にそのまま当てはめるとコストを小さく見積もることになります。
資金の話をしたついでに、ひまわり証券の費用まわりを公式の記載で整理しておきます。
| 項目 | 公式の記載内容 |
|---|---|
| 取引手数料 (レギュラー口座) | 「取引手数料は、すべて無料です。また、ロスカット手数料も発生しません。」と案内されている。ただしこの記載は「ひまわりFXレギュラー口座での取引は、手数料が“無料”です。」という見出しの下にある |
| 投資助言報酬 (ループ・イフダン口座) | 別途発生する。重要事項に「ひまわりFXレギュラー口座の取引手数料は無料となっています。ループ・イフダン口座をご利用の際には、投資助言報酬が別途発生し、当該報酬はスプレッドに含まれています。」と明記されている |
| その他の費用 | 口座開設・維持費、クイック入金サービスを利用した振込手数料、出金手数料もすべて無料 |
| 必要証拠金 | 個人は各通貨ペアのレートにより決定され、取引の4%相当。証拠金の25倍まで |
| スプレッド | 固定ではない。主要経済指標の発表前後、早朝や主要市場の休日等で市場の流動性が低い時間帯、予期せぬ突発的事象等の発生時には拡大する場合がある |
| 通貨ペア | 24通貨ペア |
| 資産の保全 | 全額信託保全。株式会社三井住友銀行へ信託保全 |
| 電話サポート | フリーコール 0120-86-9686/受付時間 午前9時〜午後5時(土・日・元日除く) |
ここが、この商品を見るときにいちばん取り違えやすいところだと思っています。「取引手数料は無料」はレギュラー口座の話で、ループ・イフダン口座にはそれとは別に投資助言報酬が乗る。しかも明細に別項目として並ぶのではなく、スプレッドに含まれる形で発生すると公式が書いています。コストは請求書ではなく、売買レートの中にあるということです。
だから手数料の欄が無料でも、スプレッドは実質的なコストとして残ります。しかも固定ではないと明記されている。リピート系は売買回数が多くなる仕組みなので、1回あたりのコストの差は回数ぶん効いてきます。「手数料0円だから何回売買しても同じ」ではない、というのは頭に置いておきたいところです。
信託保全については、全額信託保全で信託先が三井住友銀行と明記されているのは、預ける側としては確認しておきたい情報です。ただしこれは会社が破綻した場合に区分管理された資産を返す仕組みの話であって、相場変動による損失を補ってくれるものではありません。この2つはよく混同されるので、分けて理解しておくのが安全です。
サポートの受付時間が平日の午前9時〜午後5時というのも、事前に見ておく価値があります。為替が大きく動きやすいのは日本時間の夕方以降。その時間帯は電話が繋がらない前提で、操作方法や設定の確認は営業時間内に済ませておく——というくらいの構えでいたほうが、慌てずに済みます。
今日の一歩は、電卓を1回叩くこと。いまのレート × 1,000 × 0.04 で1ポジションの証拠金を出して、そこに自分が置きたい本数を掛けてみる。出てきた金額を見て「これは半年間なくても平気なお金か」を自分に聞く。判断はそこからで十分間に合います。焦らず、自分のペースで。